黎明のワルツ -Title-
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第16話 the fall [プロット版]

光太郎の高熱が収まった翌日。

渓谷のように標高のある場所の大河に沿って踏みならされた道を馬で走る。すぐ横に流れる大河は、大きな割に流れがとても速く、落ちたらとても助かりそうにない。日本ではとてもお目にかかれないような大河に、光太郎が “ウホー” とおっかなびっくり眺めている。

アム:あまり近づきすぎてはダメだよ。馬が足を滑らす。

光太郎:ん。

アム:体調はもう平気か?

光太郎:うむ。俺ちゃんは今日も元気もりもりである。

真顔でいうものの、完全に本調子にはなっておらず、微妙に強がっているのをアムに見抜かれる。

アム:………飲め。

光太郎:ありゃ。平気だってのに。

先日ゼニスから買った飲み水と薬草を光太郎に投げ渡す。

アム:自分では平気と思っていても、意外に体力は落ちているものさ。

光太郎:ぬぅ。(…苦いからこれ好きじゃないんだよな)  ※あんにゅいな顔

アム:ふふ、味が苦手か? そう嫌がるな。教会の祝福を受けた聖なる水だ。解熱だけじゃなく滋養強壮にもなる。

光太郎:それはそれは!体の内側から高潔にふぁれる気分ふぁよ!

↑ちょっとやけくそ気味に水をちゅーちゅーと吸いながら

光太郎:ところでさ、アムってこんな薬持ってたっけ?いつも持ち歩いてんの?

アム:買ったんだ。お前が倒れたあの日、通りかかったゼニス殿からな。

光太郎:っ!! …ゼニス! ゼニスにあったのか!?

アム:ああ。薬は相場の3倍の値段ぼられたがな。

光太郎:あ、あの野郎〜〜〜〜〜っ!

アム:そう怒るな。薬があったから助かったのは事実だ。

光太郎:そうじゃねぇよ!アイツのせいで俺達ぁ(てか俺)はあの双子たちに襲われたんだぞ。
くそ〜…寝込んでる時に出会うとはついてねぇ!

アム:? どういうことだ。

光太郎:そのまんまの意味だよ。あの双子たち、俺達を知った上で、あえて俺から襲ってきた感じだった。弱い俺から捕まえて、アムとの戦いを有利にしたかったんだろう。でもそれって、俺が弱くてアムが強い、っていう事を知らないと立てない作戦だよな。誰かが入れ知恵したとしか思えないでしょ。

アム:それがゼニス殿だと。いや…まぁ…彼ならあり得るか。ではお前の寝込みを襲ってきた【吊るし人】もそうかな?

光太郎:う〜ん…いや、あっちは多分違う。”—街の入口から見てた—”って言ってたから、エスピ・オールムに入る時に目をつけられたんだと思う。

アム:そうか……。ということはこれからゆく先々で同じようなことがあるだろうか。

光太郎:ゼニスは俺達と同じ道を先に進んでいったんでしょ?あるだろうなぁ…。 ※遠い目

アム:くっ。鈍いな、私は。 先日出会った時に気付いていれば…口止めできたものを…

光太郎:……いや、どうかな。あの手のやつに口止めなんてできないだろ。

アム:うん?

光太郎:やるんなら口止めじゃなくて、そうだなぁ…抱き込むってのはどう?俺達に加担したほうが “美味しいぞ” って思わせるの。そうしたら、俺達の不利になることは勝手に黙るだろうし、逆に他の戦士の情報もくれるかもな。ルーカス?とかいうやつの情報だって入るかも知れない。

アム:抱き込むって、どうやって。

光太郎:金で動く奴は金をチラつかせればよろしい。選定戦争に勝って、王様になったら金なんて思うままだろ?

フヘヘ、と邪悪な顔をする光太郎。

アム:む…なんか腹黒い…。それに、そんな果たせるかどうかもわからない約束など…

光太郎:ふぅははは笑止!! 王様になったらこっちのもんよ!ゼニスみたいな一介の貧乏プーとの口約束なんぞ、知らぬ存ぜぬで押し通せるわ!

アム:そ、それじゃあ詐欺じゃないか!ダメだダメダメ、そんな方法!

光太郎:んまーた優等生ぶった事言い出しちゃってぇ。お優しすぎるぜ、アムちゃんは。そんなんでこの先大丈夫ぅ?

アゴをシャクってうんざり顔をする光太郎。それに対して、頭に手をあてて苦い顔をするアム。

アム:私は、その若さでそんな腹黒い思考ができるお前の行く末が心配だよ。熱が下がった途端にコレだ。
霊験あらたかな聖水を浴びるように飲んでも、内面まではご利益がないと見える。

光太郎:へっ! こんな苦水ごときで清廉潔白になれるなら坊さんは出家しねー……およ?

先を歩くアムの馬が止まり、光太郎の無駄口が不意に止まる。光太郎とアムのすぐ目の前には小さな吊り橋がある。小さい上に老朽化しており、とても馬を連れて通れそうもない。人の通行でさえ怪しい。

アム:やれやれ。地図の情報が古いな。これじゃあこの橋は渡れない。

懐から出した手元の地図を見ながらぼやくアム。

光太郎:どすんの?

アム:少し回り道をしよう。この先にしばらく進めば別の橋があるようだ。大きさからして、馬もまぁ通れるだろう。

光太郎:あっちの方角?

アム:ああ、そうだ… うん? …向こうから、誰か来るな。

光太郎が “あっち?” と指刺す先、遠い向こうから馬にのった人影がやってくる。

光太郎:遠くでよく見えないけど、なんか俺達の方に向かってきてね?

アム:うむ。知り合いだろうか。

豆粒程度に見えた馬影は、あきらかに二人の方へ歩を向けている様子。馬のスピード自体は遅く、悠長…というよりは機械的に淡々としている。アムは馬に積まれた荷物の中から望遠鏡を取り出し、覗く。

白い斑の馬に乗っているのは重々しく幾重にもローブを羽織ったゼニス(?)らしき人物だった。

アム:あれは… ゼニス殿だ。

光太郎:え、マジ? ラッキー!噂をすればじゃん。

光太郎:おいアム、さっきの話!ゼニスを抱き込むって事でいんだな?
なら、俺が交渉するから変に口はさまないでくれよ?

アム:へ? あ、ああ…

ゼニスの話をしていたためか、これ幸いとニヤつく光太郎。それに対してはアムは、言葉にできない不穏な空気を感じ取っている。ゼニスがこっちに向かってきているので、二人共、その場(吊り橋近く)に留まってゼニスを待つ。

アム:(何だ…何か違和感が…なんというか…)

光太郎:おーいオッサン!

淡々とゆっくりパッカパッカと近づいてくるゼニスにしびれをきらせて声を上げて手を振る光太郎。

ゼニス:………。

しかしゼニスからは反応がなく、相変わらずゆらゆらとこっちに近づいてくるだけである。

光太郎:ありゃ? なーんか変なの。

アム:(何故だ。彼から生気が感じられない…)

光太郎:はっはーん。さては俺達の情報を売ったから警戒してんな? しゃーねーなぁ、もう。

光太郎、”よっ” と馬をゼニスの方へ向け、馬で走り出す。

アム:あ、おい。待て光太郎

勝手にゼニスの元に走りだす光太郎を呼び止めようとする。
アムのゼニスに対して感じている不信感は近づく毎に強くなっていく。

ゼニス:………………。

光太郎:おーいオッサンってば〜

アム:なんでこの温暖帯であんなに幾重にもローブを? それに馬も… 馬?

ダッ!!

光太郎がゼニスに馬を向け、動き出した瞬間からゼニスの馬が急にスピードを上げてこちらへ向かってくる。

光太郎:うぉ!なんだぁ?

ゼニス:……………………。

ドッドッドッ というリズムから、更に強い駆足に、遂にはドドドドドドドド! という地鳴りの様な音になる。

アム:っ!!!! 馬が違う!

過去のゼニスとのやり取りを思い出し、ようやくゼニスの馬が第9話時点の馬と違うことに気付く。(第9話参照)。

アム:光太郎近づくな!そいつはゼニス殿では…っ!!

ズルリ… と、糸が切れた人形のように不自然にだらりと体が垂れ下がり、その幾重にもまとった不自然なローブの中から【吊し人】の男が顔を出す。

二人羽織のような状態で後ろに隠れていた【吊し人】の男は、蹴り飛ばすような形でゼニスを突き落とす。微動だにせず落馬しゴロゴロと転がっていくゼニスと、あっけにとられてそれを呆然と眺める光太郎。

光太郎:えっ

アム:―バカな!死んだはず!

【吊し人】の男:クカ…  カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!

【吊し人】の男が投げつけたナイフが光太郎の肩に突き刺さり、光太郎は落馬して転がっていく。

アム:光太郎ーーーっ!

アムが怒りに満ちた眼差しで【吊るし人】の男に向き直り、乗馬したまま剣を抜く。

アム:外道め…! 

【吊し人】の男:クカカカカッ!

お互いがお互いに向かって、アムは剣を、【吊し人】の男は近距離用のマチェットを構える。

お互い馬を全力で走らせ、駆け抜けざまに攻撃する。

アム:ハァッ!

【吊し人】の男:カハァッ!

一閃。…のように見える攻撃は瞬間的にいくつもの攻防を繰り広げ、【吊し人】の男に致命傷を与えた。

【吊し人】の男:ぐぅぅっ!!

致命傷をくらったのは【吊し人】の男であった。

【吊るし人】の男:ッ…ッッ!

一呼吸置いて、袈裟懸けに斬られた胴体部分から噴水のように血が噴き出す。
あきらかに致命傷と言えるほどに深く、右腕もまた切り落とされ、ズルリと落ちる。
そのまま、白目を向いて落馬する【吊し人】の男。

アムは馬から崩れ落ちた【吊し人】の男が動かないことを確認すると、そのまますぐに光太郎へ馬から降りて駆けていく。

アム:光太郎、大丈夫か!?

光太郎:っぅ、いった… あ、ああ…なんとか。攻撃を食らう前にびっくりして馬から転げ落ちそうになってたせいで頭には当たらなかったみたいだ。乗馬が下手くそなのが幸いした。

アム:そうか…

光太郎:アイツは?

アム:ああ、片付い―

光太郎:……おいおい…アレ…   ※アムの背後の【吊るし人】の男を指差す

アム:―…なるほど、な。

【吊し人】の男がムクリと起き上がる。吹き出していた血はとまり、メキメキと奇妙な音を立てて驚異的なスピードで傷が塞がっていく。

福音:千古不易の咎人《リビング・デッド》

光太郎:…なんてこったぃ…。 ※キモいものを見る目。

アム:合点がいったな。先日の戦い、どう見ても助かるはずもない傷だったが…不死身のごとき再生能力が奴に与えられた【福音】というわけか。

【吊し人】の男は二人の視線には応えず、悠然と歩いて千切れた腕を拾う。拾った腕を切断面に押し当て、ニギニギすると腕はブチュブチュと不快な音を立ててくっついてしまう。腕が完治したことを確認した後、ようやく二人の方を向いて呟くように言う。

【吊し人】の男:そこの………

光太郎:??

【吊し人】の男:そこの小汚ねぇ男は…お前らの知り合い(ツレ)だろ? 

少し離れた所に転がっているゼニスの死体に視線をやりながら言う。
ゼニスはうつ伏せ状態になっているので、顔は見えない。

【吊し人】の男:まだ…生きてるぜ?

アム:………ッ!!!

【吊し人】の男:これから3つ数えて、それからこのダガーを、あの転がってるオッサンに投げる。当然…当たりゃ、死ぬ。それを止めたきゃ…女ぁ…その剣を捨てな

アム:!!

【吊し人】の男:どうする? それとも…あの男は見捨てて俺ともう一度戦うかい?
…クカカ…俺はどっちでも良いぜ?

アム:貴様…ッ

【吊し人】の男:ひとぉーつッ!!!

光太郎:(アム…落ち着け!)

アム:(…ああ。光太郎、あのゼニス殿は生きていたか?)

大きく声を張り上げる【吊し人】の男と、お互いアイコンタクトのようにヒソヒソと相談をする二人。位置関係的にはボロい吊り橋から10〜20メートルくらいの距離に光太郎とアム。そこから更に20〜30メートルくらい離れる形で【吊るし人】の男、さらにあさっての方向にゼニスの死体。という感じで、ゼニスとは距離が離れてしまっているため本当に生きているのか判断ができない。

光太郎:(わ、わかんねぇ…とても生きてるようには見えなかったけど…驚いてそれどころじゃなかった)

【吊し人】の男:ふたぁーつ!

光太郎:(どちらにせよ、アム、これは罠だ。剣は捨てちゃダメだ)

アム:(わかってる…だが…もし、仮にまだゼニス殿が生きてるのであれば見捨てるわけには行かない)

剣をギリと握り、強い意志を目に宿すアム

【吊し人】の男:みぃぃぃーつ! 時間切れだぁ!

【吊し人】の男、ゼニスの死体へ向かってダガーを投げようと、ゼニスの死体の方へ向き直る。そのアムと光太郎から視線を外した刹那―

アム:福音 勝利への翼《ヴァルキリー・ブースト》

バシュッ!という音と共に、【吊し人】の男がダガーを投げるより早く、超加速でゼニスの元へ回り込む。

アム:させるか!

【吊し人】の男が放ったダガーを剣で弾き飛ばし、うつ伏せ状態で転がるゼニスを抱き起こす。

アム:ゼニスど—

ゼニス:………

やはりそれはブラフだったと言うべきか。
ゼニスは既に死後数日立っているのか、半分腐りかけの正真正銘の死体だった。

【吊し人】の男:阿呆がっ! …かかりやがったな!!

その瞬間、光太郎の方へ全力ダッシュを駆ける【吊し人】の男。アムはゼニスのところへ駆けつけてしまったので、光太郎が完全に無防備状態。

アム:なっ…!

光太郎:狙いは初めから…俺!

すごいスピードで鬼の形相でこちらへ向かってくる【吊し人】の男。光太郎が落ちた馬からはそんなに距離が離れていないものの、とても乗って逃げられる時間はない。

アム:光太郎、逃げっ …………っ!

ドカカカッ!!
アムをその場に縫い止めるように、アムにダガーが雨あられのように無数に飛んでくる。

アム:ッッ!!

光太郎:逃げろって言ったって……クソッ! こんなだだっ広い場所で逃げ場所なんてねぇ!

迫りくる【吊し人】の男の形相に戦慄しながらも、覚悟を決め【吊るし人】の男の方へと駆け出す。逃げずに、逆に勢い良く【吊し人】の男の方向に駆け出す光太郎に、流石に【吊し人】の男本人も予想外だったのか一瞬驚く!

光太郎:道がねぇなら切り開くしかねぇ!

【吊し人】の男:カカカッ!自分から首をカッ切られに来たかよっ!!

【吊し人】の男が振りかかろうとする至近距離、その刹那。光太郎が口から水を霧のように吹きかける。それは光太郎がさっきまで飲み、懐に入れてあった水であった。

その水をいつの間にか口に含んだのか、ブーッ!と【吊し人】の男の顔に吹きかける。

【吊し人】の男:ぬぉっ! テメェッ!

たたらを踏む【吊し人】の男

光太郎:アムッ!

アム:—ああ!

その一瞬の隙に、もう一度福音で光太郎の元へ戻る。
【吊し人】の男と光太郎の間に割り込むように入り、【吊し人】の男をもう一度斬ると、距離を開くように蹴飛ばして押し戻す。

【吊し人】の男:ぐぁっ!

【吊し人】の男:ガァっぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁっっ!!!!

ゴロゴロと後ろへ転がる【吊し人】の男。すぐさま受け身を取って膝をつき起き上がるが、様子がおかしい。

【吊し人】の男:痛ぇ!痛ぇぞチクショウがぁぁぁぁっっ!

アム:(痛がっている?何故だ。さっきよりも手応えはずっと浅かったのに)

アムに斬られた傷よりも、光太郎に吹きかけれた水の方に、強い拒絶反応を起こしているように見える。

光太郎:アム、ぼさっとすんな!一旦撤退して体勢を整えよう!

光太郎とアム、すぐ近くのボロい橋の方へ全力で走る

光太郎:(俺達が渡りきったら、橋を切り落としてくれ)

アム:(了解!)

【吊し人】の男:逃がすかぁッ!!

二人を逃すまいとダガーを大量に投げる。アムは走りながらも剣でさばくが、捌き切れない幾つかが光太郎の背中へヒットしてしまう。
運良く突き刺さりはしないものの、肉をえぐるような形で傷を与える。

光太郎:う”っ!!

ズザッ!

アム:光太郎!

よろけた拍子に、吊り橋の老朽化した板を踏み抜いてしまう光太郎。

光太郎:うがっ!

落ちそうになりながらもなんとか間一髪、吊り橋を支えるロープにしがみつく。しかし、体の傷も相まって、一人で体勢を立て直すのは難しそうだ。

アム:光太郎、捕まれ!

光太郎、右手でロープを掴み左手をアムによろよろと差し出す。その間にも【吊し人】の男は走ってこっちに迫ってくる。ガシッ、と光太郎とアムがお互いの手を掴む。

アム:よしっ!そのまま落ち着いて上がってくるんだ

光太郎:あ、ああ…くっ… くそ!

痛みと出血で苦悶の表情を浮かべる光太郎

【吊し人】の男:カハァッ!

走り迫りながらダガーを、光太郎を引き上げるため背中を向けているアムへと投げる。
アム、左手で光太郎の手を掴みながら右手で剣を持ち、自分へ向かってくるダガーを迎撃しようと構える。

アム:(直線的な軌道のダガーなら…問題ない)

―がしかし、飛んできたダガーは今までとは違う不思議な形状の(=ブーメランナイフ)ものであり、アムがダガーを弾き飛ばそうとしたその刹那、軌道を変えるようにクンと光太郎の方へと折れ曲がって飛んで行く。

アム:―曲がるだと!!

ダガー程度なら弾き飛ばせると確信していたアム、目前に迫る不思議な形のダークが急に軌道を湾曲させたので、面くらい、対処に一瞬遅れる。

ドス!と音を立てて、這い上がりかけていた光太郎の胸にめり込む(鈍器のように鈍い痛みを与える)。

光太郎:ウグッ …ゲホッォ!

光太郎:………ッ!

アム:………っ!!

そのまま白目を向き、アムと繋いでる手もだらりと力が抜け落ち、吊り橋から静かに落ちていく。
宙へ投げ出さされる光太郎。スローモーションのようなコマ運びでゆっくりと落下していく。

アム:光太郎っ!

ダンッッ!! 光太郎を追うようにアムも吊り橋から飛び降りる。

空中に投げ出される二人。迫り来る濁流。吊り橋と下の大河へはビル十数階分の高さがあり、そのまま激突すればただでは済まない。アムは光太郎に追いつき、抱きかかえるが、光太郎はすでに意識がない。

アム:—ヴァルキリー……ブースト!!

濁流の待つ水面に激突するその刹那、ヴァルキリーブーストを発動して、落下速度を無効化し、一瞬だけ空中に停滞するアム。
しかしヴァルキリーブースト自体に空を飛ぶ性質はないので、すぐに羽根は散り、濁流へと落ちる。

ドッパァァァン!

轟音を立ててうねる濁流に飲み込まれる二人。
意識なく、何かにつかまる力もない光太郎はなすすべもなくアムの手から離れ、流されていってしまう。

アム:光太郎! ガハッ… 光…太郎ッ!

アム自身も濁流に飲み込まれないようにもがき泳ぎながら、光太郎の名を呼ぶ。しかし、光太郎は流れにのまれドンドンと流されていってしまう。

そんな二人を崖の上から眺める【吊るし人】の男、その顔は標的を逃してしまった事により不機嫌そうである。

【吊るし人】の男:チッ… 

濁流に流されながらも光太郎を探すアム。

アム:光太郎! 光太郎ーーーー!

光太郎の姿はもう見えない。うねる濁流にアムの光太郎を呼ぶ声だけが無慈悲にコダマする。

to be continued

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